京急久里浜駅から千代ケ崎行きバスで「長瀬」下車。右折すると、海沿いに久里浜少年院が建つ。その構内の片隅に大塚山がある。緑と岩肌の高さ十三b、周囲九十bほどの小山。鉄製の階段で頂上まで登ると、平根山を背に正面は浦賀水道、右手に火力発電所の煙突。以前は近くに小塚山があった。古地図やぺリー来航時の記録に「大塚・小塚」とある。地元のお年寄りの話だと「上げ潮だと島となり、引き潮だと飛び石伝いに渡れた」という。埋め立てにより今は小塚はない。少年院が立てた大塚山の説明板に、こう書かれている。「この山は昔、海中の島だった。当時は漁師の山たて(漁をする時の目標)として、重要な役目をしていた。そのころ、この付近は良い漁場であった。戦争中、海軍が裏の平根山を削って埋め立て造成したのがこの地で、海軍対潜学校が設けられた。昭和二十四年、法務省に移管されて以来、往時を記念する山として保存されている」
院長の逸見勉さんは「ここは在院の少年たちの憩いの場として最適です。設立三十周年の記念事業として今、大塚山を中心に造園計画があります。設計は嶋谷次長が腕を振るいました」と語る。そこで嶋谷宗泰さんにうかがった。
「大塚にはオオシマザクラや山ユリ、ツバキなどを植え、別に築山を造って昔の小塚をしのんで復元を考えております。大塚と小塚の間には小石を並べて海辺を想定、できればハマユウの群生を育ててみたい。奥は松林にしたいのですが・・ 。手づくりによる院内緑化というところです」
大塚の中腹には横穴がある。高さ二b、幅一・三bで奥行きは三bほど。海からの風を避けるためだろうか、一b入った所で左へ曲がっている。ここにはかつて五輪塔があった、と伝えられる。
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