かつての旭町、今の市内本町一丁目にあった帝活館という映画館が「帝活キノグラフ」を発行していた。大正九年(一九二〇)八月十六日発行の第四号に、当時のプログラムがある。
@「序楽」A「ヴヰナスの悪戯」−全二巻(喜劇) ヴァヰオレット・マーセロー嬢主演 B人生哀話「黎(れい)明」−全六巻 C独唱「眠りの精」香川静枝嬢出演 D「第五ライオンマン」第十一、十二篇・四巻。
ライオンマンとは、のちのオーゴンパットと同じように、正義の味方を演じたらしい。紙面には「ライオンマンが何回、画面に登場したか」という懸賞も。 結果は、応募者百二十六人のうち、正解三十二回を当てたのは「魚がし・岩田」という人ひとり。賞品は、入場券二十枚だった。
翌十年三月十七日発行の第三十号には、次のようなプログラムが載っている。
氏名は説明者、弁士だ。
@喜劇「子煩悩(ぽんのう)」全二巻小島津紫涛、佐々木紅涛。
A紅涙史「女性の賜」全六巻、松本天鼓。
B西部大男性劇「愛国者」全五巻、島津天涛。
C大連続「暗号の四美人」松本天鼓。以上はすべてアメリカ映画。
第四号には「観客への希望」という次のような投書が載っている。
「映写中、むやみに拍手するのはよして貰(もら)ひたい。やれ飛行機が飛ぶ、やれ馬が駆けたと云っては騒ぐ。いやはや馬鹿の骨頂だ。なじみの俳優が現はれた時タイトルで拍手するならまだしも、画になつたら止めて貰いたい。弁士の説明も何もかも聴かれたものではない。
浅草などでそれな真似でもして見給へ。それこそ、田舎(いなか)者とか、シッ、なんて犬か猫(ネコ)の扱いだぞ。お互いに注意すべき事だと思う」
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