石井 昭 著   『ふるさと横須賀』


佐島の七不思議  『洞窟に朱鶴の絵が』
原文

阿部倉に次いで、相模湾側の大楠の佐島にも、かつて七不思議があった。
@磨墨(するすみ)の井戸=鎌倉幕府の御家人梶原景季(かげすえ)が、磨墨という名馬でやって来た。 蹄(ひづめ)の跡から水が湧き出たが、海辺なのに塩分を含んでいなかった。
A日の出の松=夕暮れになると梢(こずえ)の周辺が明るくなる松の大木。
Bカラス貝=深田川にいるカラス貝は咳(せき)によく効(き)くと珍重。
C片葉の葦(あし)=深田川のは、片方だけに葉が。
D朱鶴の穴=海岸の洞窟の天井には、朱色の鶴が描かれていた。
E尻びっさりの穴=山ぎわにあった穴は、後ろ向きにならぬと入れなかった。
Fひやりの穴=人が入ると、急に寒さを感じた。
ところで、神奈川県内の七不思議に目を向けると、畠山重忠の七不思議(横浜市)、鎌倉の七不思議(鎌倉市)、飯山の七不思議(厚木市)、女坂の七不思議(伊勢原市)、小和田の七不思議(茅ケ崎市)、 煤ケ谷の七不思議(清川村)などが伝えられる。
 ここで〃七不思議〃をー席。不思議、不可思議なる語は、もともと仏教の言葉。 人の思い及ばぬものをさした。「不可思議七種」というが、これを自然界や人間界で特異なもの、驚嘆すべきものに応用したのが七不思議だ、といわれる。 なぜ、七なのか。七でなけれぽいけないのか。それはともかく、七にまつわる話を二つ、三つ。
◆釈迦(しやか)は過去仏の最後に現れた。過去七仏中の第七位。誕生した時に七歩あるいて「天上天下唯我(ゆいが)独尊」といわれた、という。
◆戦時中の「七生報国」は輪廻(りんね)転生の限界を示したもの、とか。
◆「創生記」では、神は森羅万象を完成、七日めを祝って休日とした。
北斗7星の物語。 挙げれば、切りがなさそう。
原本記載写真
こちらは「佐島の七不思議」。土地の人たちの間で言い伝えられているが、この辺りも開発が急ピッチ。『磨墨(するすみ)の井戸」「日の出の松」など、情緒がある名称。 写真は、今の佐島海岸。海辺に立つと心がなごむ

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