石井 昭 著   『ふるさと横須賀』


阿部倉の七不思議  『昼でも蛍群れ飛ぶ』
原文

国鉄衣笠駅から逗子駅行きの京急バスで「大楠山登山口」下車。左手に入ると、やがて阿部倉の里。背後は大楠山、かつての衣笠村大字(あざ)平作、小字阿部倉。ここに七不思議が伝えられる。 @明神の相生(あいおい)の松=阿部倉の鎮守、諏訪神社境内に松を植えると、必ず、相生の松になる。
A向山の南面の月=向山の上に出る月は、必ず南の方向にだけ見える、という。
B湯の蛍=湯の沢では、昼間でも蛍が夜と同じように、群がって光を出して飛ぶ、という。
C湯本の陰陽石=夫婦和合の験(しるし)のあるという、二つの石。
D湯本の朝煙=湯の沢では、四季を通じて朝必ず濃い霧が立ち込める、という。
E平山の片葉の葦(アシ)=平山の葦の葉は片方ばかり。地形の関係で、ある方向ばかりに風が吹くからだ、とか。
F荻野の勝手水=荻野の井戸水は、夏は多く冬は枯れてしまう。身勝手な水だとか、どこでもお勝手用水がわき出る、とも。解釈二つ。
 七不思議といえば、代表的なのは、東京、下町の本所七不思議。次にペンをすべらしてみる。
@無灯蕎麦(そば)=だれもいないのに屋台の灯がついている。
A送り拍子木=鳴らさないのに拍子木が嶋る。
B片葉の葦=思いをかけた女が不承知なので、池のほとりで殺されてから、そこの葦は片葉に。
C足洗邸=天井から泥だらけの足が下がっている。洗ってやらないと大暴れするという。
D送り提灯(ちょうちん)=前に立って送ってくれる提灯のこと。
E置行堀(おいてけぼり)=魚籠(びく)を下げて通ると「置いてけ、置いてけ」といって声を掛けられる。
F狸囃子(たぬきばやし)=近所では、だれも囃子をやっていないはずなのに、囃子が聞こえてくる。

原本記載写真
大楠山登山口のひとつ阿部倉の里に「七不思議」が伝えられる。うしろは大楠山。かつての衣笠村大字(あざ)平作、小字阿部倉である。宅造の波が押し寄せる中での里の風情は得がたい。写真は、阿部倉の碑。バス停「大楠山登山口」が近い

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