石井 昭 著   『ふるさと横須賀』

石垣 @ 『先人の生活の知恵』
原文

横須賀市内には地形上の関係から崖(がけ)地が多い。最近は急傾斜地に見られるようなコンクリート造りが目立ってきたが、 そのー方、まだまだ色とりどりな石垣がある。山すその道沿いだろうが個人のお宅だろうが、 石垣を眺めるのは楽しい。魅せられて足を止める。つくづくと石垣は先人の生活の知恵だと思う。 また、ものによつては石垣造りは職人の腕の見せ所だったかな、とも。 話の順序から、まず石垣造りからー。 大まかに石積みの石は三つに分けられる。野石=ほぼ同じ大きさで手を加えてない石。自然石。 その中で角張ったのを野角(のかく)、丸みを帯びたのを呉呂太(ごろた)、扁平で長めのを野板(のいた)という。 樵(こり)石=自然石を切り割つたもの。その中で楔(くさび)型に割ったのを間知(けんち)石、長方形に割ったの を布石、正方形に割ったのを枡(ます)石という。間知石の間知とは、田畑の収穫などを調べた検地のことでー定の寸法の意味だった、とか。 乱石=大小さまざまな半端もので雑石とも。 次は石積みの方法だ。一般に整層積みと乱層積みのニつがある。 整層積み=別に、トオシ積み、ともいう。上の石と下の石の横をー直線に通しながら積む。すべての石がー定でなければならない。 乱層積み=別に、オトシ積み、ともいう。石のへこんだ部分へ、他の石の出鼻つまり出っ張る部分を重ねて積む。 話をまとめよう。石垣造りは野石、樵石、乱石のいずれかを用い、整層か乱層の積み方をする訳だ。六通りある。 整層野石積み=形が同じような自然石を並べる。 整層樵石積み=時代が進むにつれ多くなった。 乱層野石積み=古い。旧道沿いに見かける。 乱層樵石積み=職人の腕の見せ所だった造り、とか。 整層乱石積み=最近多くなつたコンクリートの枠に抱かせて積む方法など。 乱層乱石積み=大石を下に、小石を上に積む石垣造りの”元祖”か。
原本記載写真
道沿いでも、個人のお宅でも、石垣を眺めるのは楽しいものだ。石垣の世界も奥が深いという。 写真は、横須賀市不入斗町 1 丁目にみられる石垣。形が同じような自然石を並べた、整層野石積みである

石垣 A 『旧道らしい素朴さ』
原文

石垣の積み方には、整層野石積み、整層礁(こり)石積み、乱層野石積み、乱層礁石積み、整層乱石積み、乱層乱石積みの六通りがある。 そう簡単に区分けできない所もあるが・・。石垣がいつごろ造られたのかは、そのままその地域の歴史につながるので軽率に言い切れない。 横須賀市坂本町二丁目の崖地は、さながら ”石垣の展示場”である。坂本小学校に入る広い坂道の右側、約八十bの崖地に大小含めて七種類も見られる。 この坂道の手前を旧道が横切る。旧道は浦賀道の枝道、八坂(やさか)道の続き。坂本坂上の飯塚商店と静岡屋食品店の間から入り坂本町四、六丁目の境に出、 池上に向かう大通りに台流する。 坂本小への道と旧道が交差する点に立つ。右側の手前かどは屋根付きの駐車場。プレハブの物置裏は、高さ三bの自然のままの土手だ。 次いで、大きめな乱層野石積み。旧道沿いらしい素朴さ。 曲がり角から約十五bは、整層礁石積み、乱層礁石積み、赤レンガ混じりのコンクリート壁と並ぶ。手前の整層礁石積みは、長方形の布石と正方形の枡(ます)石の組み台わせ。 赤レンガは海軍施設の払い下げか。汐入町の山手にも見かける。 ここまでの崖地の高さは三bほど。続く崖地は高さ七、八bになる。長さは三十b近いが、二種類の乱層礁石積みが切り立つ。 手前は抱面(だきづら)、石と石とが接する面のことだが、そこがコンクリート。石垣というよりは擁護壁に近い。 左右をがっちりと固めている。先のほうは間知(けんち)石の谷積み。下の石が作る谷へ、上の石をはめていく積み方のこと。 興味があるのはー番上の天端(てんば)、野球のホームベースと同じ型なので五角天端と呼ぶ。三角天端よりも安定感がある。 下から積んで最後に天端だから、天端をきめるのは苦労が大きい。
原本記載写真
見のがしがちの石垣である。石垣の積み方は、基本的には6通りあるが、時代とともに変わりつつあるという。 写真は、横須賀市坂本町2丁目、坂本小学校への坂道にみられる石垣。さながら石垣の展示場である

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参考文献・資料/リンク
横須賀市市立図書館
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