石井 昭 著   『ふるさと横須賀』


大楠山  『雄大な景観を満喫』
原文

横須賀市の北西部にある大楠山は標高二百四十二bである。太陽の日差しと海の青さと緑の交わる三浦半島の最高峰だ。頂上へは、@衣笠駅から逗子行のバスで「大楠山登山口」下車、A最も距離の長い衣笠駅裏からの道のり、B相模湾側の秋谷のバス停「前田橋」下車、C同じく芦名のバス停「芦名口」下車の四つの登山道がある。 どの道も春は新緑の葉に包まれ、夏は強い日差しを遮り、秋は木の葉が黄色に染まり、冬は落ち葉を踏みしめて行く。四季を通して楽しめるハイキングコースだ。 春うららの日、「大楠山登山口」から登った。阿部倉七不思議の石塔を過ぎると、やがて横横道路にかかる「あべくらばし」。せせらぎに沿って続く凝木の階段、繰り返す起伏のあと、山頂に着く。高さ十四bで三本の柱からなる展望塔とビューハウスがある。塔に立つ。すぐわきは電電公社の船舶用無線中継所。ほかに視野を遮るものはない。雄大な景観だ。北は関東平野を隔てて秩父連山を望み、西に丹沢、箱根、富士、伊豆の山並み、東に紫紺の山肌の房総、南には大島が浮かぶ。一幅のパノラマ美を満喫することができる。ここからの展望は、昭和五十年九月に「かながわの景勝別選」の一つとなった。 ! ビューハウスのあるじは高橋芳熙(よしのり)さん、キノさんご夫妻。山頂に住むこと今年で三十七年目。ピューハワスの管理人をかつて出た。むろんボランティア。いちだん低い所の住まいに電灯がついたのはニ十年前、水道は今もない。ここで四人のお子さんを育てられた。大楠の小・中学校へ片道一時間半もかかって通学したそうだ。 芳熙さんは明治四十四年の生まれで七十三歳。「孫に手をひかれる年齢ですが、皆さんに喜ばれるので、山の面倒や登山者のお世話で三十七年たちました」と語られる。 ピューハウスの片すみ。十八枚の感謝状を横目に、お話は尽きない。
原本記載写真
標高242b。三浦半島でー番高い山の大楠山山頂に立つ展望台は昭和33年に建てられた。 ここからの眺めは、丹沢、富士、房総などが一望できる。「かながわの景勝50選」 の1つ。 写真は、山頂の展望塔

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