石井 昭 著   『ふるさと横須賀』

お穴さま 『日蓮上人参籠の窟』
原文
横須賀市米が浜の共済病院から深田台へ向かう「裏道」を行く。左手には米が浜神明社。 その前のフェンス沿いを登り詰めると、日蓮宗は龍本寺の境内へ。 その石段の途中に、日蓮上人がおこもりしたという窟(いわや)が残る。 古くから土地の人々は「お穴さま」と呼ぶ。まずは、龍本寺から紹介してみよう。 「横須賀案内記」(大正四年刊)には、こう述べられている。 「猿海山と号す。深田米ケ浜の懸崖(けんがい)にあり。本市第一の大伽藍(がらん)たり。 建長五年(1253)三月、日蓮上人、開宗のため鎌倉に入らんとし此(こ)の地に上陸し、 三七日間滴錫(ていしゃく)読経の霊跡にして寺側崖下、上人参館(さんろう)の窟あり。 土人(土地の人)石渡左衛門、帰依して出家し、日妙と号し、一寺を創建して開基となる。 六世日栄の代、之(こ)れを金谷(かねや)に移して大明(だいみょう)寺と号し、 更に本寺を建立して大明寺の奥院とせり」
 話を戻そう。「お穴さま」については「法華(ほっけ)霊場記」に「公郷村の住人石渡左衛門は建保年中、豆州(伊豆) より此(この)村へ移り、建長五年の秋、日蓮上人渡海より帰依して吾(わが)家へ誘ひ、旅の労(つか)れを休ませ、 夫(それ)より上人、米の浜の厳窟に入り暫(しばら)く法要を説き玉ひければ人々、聴聞して…」とある。  「お穴さま」には線香の煙が絶えない。毎日のように訪れる人、時たま姿を見せる人、いずれにせよお年寄りが多いようだ。 この辺り真夏の日差しも柔らかい。とある昼下がり、おばあさんがー人、手を合わせる。 「名前ですか。いいですよ・・・ここまで登ってくるのが、わたしの健法です。まあ『お穴さま』に見守られて 長生きしています。下町や米が浜通のすぐ近くで、これな静かなのがいいですね・・・」

原本記載写真
「・・・上人、米が浜の巌窟に入り暫く法要を説き玉ひけれぱ人々、聴聞して・・・」と伝えられる日蓮上人のおこもりの「お穴さま」である。 =写真=。横須賀市深田台、龍本寺の共済病院側の中腹にある。線香の煙が絶えない

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